保育所における運営費の弾力運用の結果は・・・・

2020.01.04

待機児解消のため国は2000年、自治体および社会福祉法人に限定されていた保育所運営に株式会社の参入を解禁しましたが、その影響は現場を苦しめています。

私立の認可保育所には自治体から運営費として委託費が支払われています。年齢別の子ども一人あたりの単価で積算され、国や自治体が税金から負担し、更に保護者が保育料を支払い成立してきました。

その使途は、人件費、給食や保育材料などの事業費、そして福利厚生や土地建物の賃借料など管理費の3種類ですが、国は委託費の8割を人件費として算出してきました。

ところが企業にとって人件費比率が8割では利益が少ないため、いわゆる第299号通知と呼ばれた2000年の「保育所における運営費の弾力運用」の通知で、人件費・事業費・管理費の相互流用や同一法人が運営する他の保育所への資金流用や積立を可能としました。

更に2004年には、同一法人が運営する保育所以外の介護など福祉施設にも資金流用を可能とするなど規制緩和が進められました。その結果、人件費比率がとても低いため質問しました!

昨年度の私立認可保育所運営の社会福祉法人、株式会社それぞれの施設数と人件費比率の平均を質問したところ、社会福祉法人は平均53.7%。株式会社は平均39%でした。

委託費にしめる人件費比率が50%を下回る施設数を質問したところ、社会福祉法人では11施設、株式会社では55施設のうち53施設だったのです。

昨年も保育所の人件費について質疑したのですが、世田谷では保育所等運営費助成金交付要綱を定め、開設2年目以降の園は、一般保育所対策事業費加算を受けようとする前年度の経常収入に対する人件費比率が、50%以上であることを規定しており、大田区も検討すべきと質問したところ、区は、保育士の個人別の昇給状況を報告させ処遇改善の効果をはかるということだったのです。しかし、平均39%という結果は、改善されているとは言い難い状況です。

株式会社で人件費比率が一番低い施設は何%か質問したところ、29.3%!そして常勤保育士の平均月額賃金が最も低い施設では、月額賃金241,752円でした。
ちなみに、各施設には処遇改善等加算やキャリアアップ補助金など支給されているのですから、賃金が改善されてもいいはずです。

2016年度の包括外部監査で指摘があった保育施設では、本来保育のために使う委託費の半分が翌期に繰り越され、公認会計士から「会社から出された収支計算が、仮に正しいなら戻入を求める水準」と意見が付されていました。

2018年度決算書によれば大田区から支払われた私立認可保育園の入所者運営費だけをみても、国基準扶助費94億6530億2000万円。区独自補助である法外援護費は53億1290万5000円と147億円を超える額です。更に保育料が入ります。

東京都はキャリアアップ補助金で処遇改善を実施するにあたり、東京都は2016年度から「賃金改善実績報告書」の提出を各事業者に求めました。制度を作るだけではなくそれが適正に執行されているか、チェックする仕組みが大事です。

国は保育士の処遇改善のために2014年から2017年の4年間で月額21000円約7%の給料アップを開始しました。更に2017年4月からは全ての保育士を対象に「保育士処遇改善等加算Ⅱ」の月額約6000円、2%の給料上乗せをしています。

それに加え副主任保育士など新たな役職が新設され、経験を積んだ保育士や役職の確保をめざし最高4万円の処遇改善が盛り込まれています。
国、都、更に大田区独自の保育士応援手当月額1万円などが加算されているのですから、それらを差し引けば企業の月額賃金が低いことがわかります。

企業の月額賃金、人件費比率が低い理由は、国が弾力運用を進めた時点で人件費分の流用上限が設けられていないためです。
国は毎年度、職員の本俸基準額及び特殊業務手当の通知で、公定価格を示しています。それらが十分に守られているのか。大田区は認可保育所の指導検査において、公定価格における各種加算の状況をチェックしていますが、各事業所も公定価格の通知を共通認識しているのか。

昨年3月、子ども子育て支援法が改正され、処遇改善について「人件費の運用実態等の十分な調査、検証」が付帯決議されました。これは国も委託費の弾力運用をようやく重く受け止めた結果ではないでしょうか。

区内私立認可保育園の実態から、特に株式会社の人件費比率の低さは、どんなに処遇改善しても人件費比率に歯止めがかからないことを示しています。
区としてこの点をどう受け止め、調査、検証していくのか質問したところ、「処遇改善の実態について厳正なチェックを行い、制度の適正な運用に努める」と答弁しましたが、保育士が継続して働ける環境づくりは、保育を受ける子ども達の育ちを支え重要です。

区は指導検査のため様々な書類を提出させ、それをもとに各施設へ指導、改善を求めています。それらは子どもにとって安心安全の保育、保育の質を高めるためであり、保育士が継続して働き続けられる環境を整える重要性があります。

時には施設から厳しいというお声もありますが、変形労働時間制で法定労働時間外に対する割増賃金が未払いの指摘が改善され残業代が支払われたり、或いは区の提示する職員配置基準を満たしていないことや法外援護費の一部が適正に使用されていないなどの指摘は、子どもの命を守るためであると同時に、そこで働く保育士にとって安心な職場作りにつながります。
区の保育所等指導監査は217年度は103施設のうち31施設でしたが、2018年度は130施設のうち71施設の実地調査を行っていましたが、園長経験者含め職員の方々が、指導検査に懸命に取り組んでいます。

2016年度から指導検査が大田区の事務となり、当初対象施設は89でした。待機児解消のため保育所を増やす中で、私は指導検査の人員も増やしてほしいと取り上げてきました。現在、指導班を2班から3班に増やし、公認会計士が財政をチェックしている点は、評価できますが、待機児解消で保育所が増加しているため、果たしてその増加に職務が追いつく体制なのか。それらは検証していきたい。

一方、認可外保育施設の指導監査権限は東京都のため、区内の施設であっても保育環境を十分に検査できるか懸念があります。東京都には9月1日時点で1285の認可外保育施設がありますが、昨年度はわずか225施設しか指導監査できなかったそうです。

区内にも懸念される施設があったため議会質問で取り上げてきました。昨年度決算でも、指導内容が改善されず懸念される認可外施設がまだ区内にはあること指摘いたしました。
その施設に対して昨年、児童福祉法第59条に基づく東京都の立入調査をした結果、29日の調査期間のうち23日で一人勤務の時間帯があり、保育士の資格を持っていない方が保育していました。
更にその後は立入調査さえ拒否していたため、設置者に対し改善勧告を実施。それでも一人勤務など改善が図られず、設置者から12月18日付けで廃止届が提出されました。

ところが今年1月、東京都が現地調査に行ったところ、無届け施設として運営されていました。2月、同一場所に前と同じ電話番号で同じ法人が名前を変え開園届けを出しておりました。都は受理して認可外保育施設と認めたようです。しかし指導監査内容を見ると一人勤務など改善されていない項目がまだ多数ありました。
区の担当者も様々対応していますが、保護者は具体的な実態はわからず子どもを預けざるを得ない状況があります。

幼保無償化により、指導内容が改善されていない認可外保育施設であっても、保護者の不利益になることを避けるため保育の必要があると認定された3歳から5歳に37000円を上限、0から2歳児の非課税世帯など利用料を補助します。

認可外施設運営者が、3歳以上の保育料値上げ通知を保護者に出す便乗値上げが確認されており、様々な問題が顕在化するなかでの無償化です。
全国市長会が基準を満たさず安全性が担保できない施設にまで一律に無償化の対象とすることに反発しました。結局各自治体独自で条例をさだめるという方向でした。杉並区と朝霞市が基準を満たさない施設は対象から外すとしています。

大田区は、認可外保育施設での死亡事故を受けて、「子ども達が安全・安心な保育を受けられるよう責任を果たすこと、利用実態や保育園を利用できないご家庭の状況の把握に努める」と述べていました。無償化の施設として認められるためには、都への設置届け出を行い、その上で大田区が確認の後、公示を行うことで対象施設になるそうです。

大田区保育士応援手当のように保育士に直接、年2回6万円の手当を振り込みすれば確実に届きます。処遇改善費も保育所ではなく保育士に直接振り込み、人件費分の流用上限を設けるなど対処すれば安定的な賃金の確保がもう少し進み、運営費の弾力運用による公金流用という問題に対しても明確に課題を共有できると考えます。これは今後議会としても声を上げていかなければならない課題です。

帝国データバンクが2016年度に保育所運営の調査をしました。それによれば2015年度保育所運営は社会福祉法人が 85.8%、「株式会社」と「有限会社」は 472 社で 7.3%だったそうです。

しかし、収入高を見ると事業者全体で 29.3%が増収、『株式会社』は 43.1%が増収と非常に高い。ここに運営費の弾力運用の実態が見えると思いませんか。
自治体別の調査結果はありませんでしたが、大田区は23区で最も株式会社の参入が多いのです。

幼児教育・保育の無償化が始まり、本来、長年の課題である待機児解消と保育士の確保はセットで考えなければ解消しない課題です。そして保育の質を高めていく環境整備が優先だったと思います。

保育士の育成が子どもたちに大きな影響を与えることを忘れず、同じ施設でずっと働き続けられるよう、弾力運用の見直しを問い続けていきたい。

同時に、子ども子育てアンケートにおいて幼稚園に預けたいという保護者の声が多く、保育園の整備と幼稚園教育についても問われています。
その視点を大切に子どもの最善の利益と命を守ることを何より大切にする大田区の子育て環境を目指していきたい。

| 議会・活動報告 |

大田区社会福祉協議会「こども1000人アンケート」

2020.01.04

大田区から委託を受け大田区社会福祉協議会が取り組んできた事業に「地域とつくる支援の輪」プロジェクト事業があります。
2019年第2回定例区議会ではその中で実施した「こども1000人アンケート」を取り上げました。

「地域とつくる支援の輪」プロジェクト事業では、子どもの貧困対策に資する区民活動の支援や活動団体間など、新たな地域資源の開拓に取り組む事業を展開。社協は「こども1000人アンケート」を実施し、120団体へアンケートを依頼しました。そして1229名のこどもたちから「声」が届けられたのです。

「何をしているときが楽しいですか」という問いに75%が遊んでいるときと答え、子どもは遊ぶことが仕事という成長期の子どもらしい姿を感じました。

「大人に言いたいこと、してほしいこと」の質問では「大田区にもっと遊び場所を増やしてほしい。」「ボール禁止の公園を減らしてほしい。」「無料で教える塾を増やしてほしい。」など行政に対する様々な声が書かれていました。

その中で6歳の小学生が「だいすきっていいたいです。だっこしてほしい。」
7歳のこどもの「もうちょっとだけわたしのこと見てほしい」「もうちょっとだけわらってほしい。」という心の叫びが胸に堪えました。
子どもは決して贅沢な願いを訴えているのではなく、ちょっとした親子のふれあいや心からの語らいを必要としていると、このアンケートは教えてくれました。
そしてアンケートに携わった多くの区民団体が、子どもと本音で語り合える居場所、地域に根を張り横のつながりを作っていることがわかりました。

公園での遊び、DVの親子と寄り添う、本の読み聞かせをする、障害のある子どもと放課後を過ごす、子どもと一緒に食事をする食堂、みんな一緒の学習支援などそれぞれの区民団体が愛情を持ち子どもと歩んでいることが、どんなに大田区を支えていることか!

こども1000人アンケートから、保護者にとっても子どもにとっても地域に気軽に利用できるスペース、ほっとできる居場所の重要性を痛感しました。

また報告書から、区職員による分析、傾向と対策、そして専門家の意見等も踏まえ、具体的に大田区の施策に生かすことが、子どもの未来につながると強く感じました。

小学生から高校生までが素直に生の声を届けてくれましたが、アンケートで終わらせず、具体的な対策へとつないでいきたい。

こども1000人アンケート」は、2年連続で実施しています。是非ご覧ください。

 

| 議会・活動報告 |