羽田空港A滑走路の運用変更に伴う、地域住民及び就業者に配慮した施策を求める陳情は採択を

2016.10.21

48時間強制退去から連綿と続く羽田空港の歴史には、当事者でなければ言い表せないほどの悲哀があったことと思います。拡張につぐ拡張は、D滑走路建設で終わるのではないかと私自身は思っていたものでした。しかし、その期待は裏切られ今日に至っています。

2005年、羽田空港の発着能力28,5万回を407000回に増やすためD滑走路建設、公有水面埋め立てを提案した理由として、国交省は5項目にわたる目標を示しました。その中に航空市場における真の競争を行わせるための環境整備や地域交流の促進・地域経済の活性化がありました。

確かに羽田空港の発着能力は飛躍し世界4位に位置するまでになりましたが、大田区の地域経済は活性化したでしょうか。区内中小企業は減る一方で、従業員数も減少を続けているため、商店街も影響を受けてきたではありませんか。

しかしあの時でさえ国交省は、電波障害の影響がある木更津市上空の着陸ルートの高度を、現状の3000フィートから4000または5000フィートに引き上げる措置を行うと回答しました。3000フィートでも電波障害の対策を講じるとした国交省が、この度の飛行―ルート、京浜島の高度150フィート、約50メートル真上を飛行する新たなルーについて一顧だにしないというのです。それは騒音影響だけではなく、低周波、振動、電波障害など多岐にわたると考えるべきであり、その影響を多大に受ける住民の声を大田区当局は勿論のこと、私たち区議会も共に受け止め、国交省に対策を求めることは当然だと私は受け止めました。

昭和53年の羽田空港沖合展開計画は、地域住民に対する騒音問題の解消と安全性の確保という前提で始まりましたが、新A滑走路をそのまま平行に沖合展開すれば住宅地へ騒音被害が及ぶとして、昭和56年に滑走路の方位を北側に5度変更する修正案が浮上し、新A滑走路が建設されました。

その結果、航空機の飛行経路ではなかったはずの京浜島で、飛行ルートの真下での操業を余儀なくされたのです。そこで働く従業員は、航空機騒音及び恐怖心により耐えがたい状況に遭遇し、陳情者の方々は運輸大臣に対して行政訴訟及び民事訴訟を提起したと丁寧にこれまでの事実を説明しています。その訴訟のなかで当時の運輸大臣が「新C滑走路が供用された段階においては、原則として航空機は京浜島上空を飛行しない」と明言したからこそ、飛行差止の求めは達成されたとして行政訴訟を取り下げたというのです。それは行政機関への当事者の信頼感だったのではないでしょうか。

それなのに再び、南風時にA滑走路北側から着陸のルートが復活するという国交省に対し、この地でものづくりに長年取り組んできた方々へ配慮した施策を議会として求めることは当然です。京浜島は昭和島と異なり当初から飛行航路の範囲には入っておらず、その前提のもとで移転が進められました。工業専用地域といえども公害防止に取り組みながら大田区のものづくりを支えてきたのです。

また、この行政訴訟があったから飛行機は飛ばず、京浜島以北の住民が静かな暮らしをすることができたのです。その歴史はとても重いのです。

陳情の委員会審議において「面として京浜島全体のお考えはどうか、それを踏まえながら国、都において適切な対策をされるべきだと考えている」と御答弁がございましたが、航空機騒音影響を京浜島全体としての考えで集約しきれるものでしょうか。飛行経路は緻密に計算された一本のルート・空の道であり、その真下にある企業の方々の影響の大きさと真摯に向き合うことなのです。また、工業専用地域として騒音などの規制がなく、製造業の集積と矛盾するのではないかと懸念するご意見もございましたが、頭上50メートルを通過する航空機騒音の影響と落下の危険性は、工場運営により出される騒音とは全く別次元の問題であり、この陳情が採択されることで製造業の集積と矛盾するとは思えません。

2003年に大田区議会は陳情1564号を審議し、全会一致で採択した歴史があります。それは「市街地上空を飛ぶ、羽田空港離陸航空機の左旋回中止を求める陳情」でした。その中には次のように書かれていました。

「当時の運輸省は羽田空港の沖合移転に伴う、地元への説明で「海から入り(着陸)海へ出る(離陸)を100%採用することで抜本的に騒音問題を解消します」と約束してきました。左旋回は、この区との約束を反故にしていくもので認められません。」と記載され、私たちはこれを全会派一致で採択してきたのです。あれから13年、北風時A滑走路北向き離陸左旋回を、機能強化の実施に先立って廃止すると国が回答したそうですが、それら含め空港所在区として議会として被害を受けてきた住民と共に歩むことが、必ずや道を拓くと信じ、この度の陳情に採択すべきです。

京浜島での操業がこれからも安定的に操業できるよう国に対する施策を私たち議会が大田区と共に要望していくべきです。国は2020年オリンピックを目標に訪日客を増やすため首都圏機能の強化に乗り出しましたが、その前にここで暮らす区民の生活を第一にすることが自治体の仕事です。

「羽田空港A滑走路の運用変更に伴う、地域住民及び就業者に配慮した施策を求める陳情」は残念ながら不採択になってしまいました。飛行ルートが確定し、実際に運用されてからでは遅いのです。今示している騒音の数値88デシベルを超える騒音がでたら、多くの人々が問題を認識するのかもしれませんが、その前に問題を指摘し、対策を求めていくべきなのです。かつて行政訴訟を行い京浜島上空を飛行するルートが見直された歴史はとても重いものなのです。

 

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