子ども・若者の学びを支援するために・・・定例区議会質問から

2018.04.28

2006年、経済協力開発機構が「子どもの相対的貧困率」を発表し、OECD加盟国で日本の子どもたちの貧困、特にひとり親家庭の相対的貧困率の高さが指摘されたことは、大きな衝撃を日本社会に与えました。

2013年6月、親から子への貧困の連鎖を断ち切ることをめざした「子どもの貧困対策の推進に関する法律」がようやく成立し、「生まれ育った環境によって子どもの将来が左右されることがないよう」教育の機会均等の対策を国・地方自治体の責務で行うことが義務づけられ、翌年8月には「子どもの貧困対策に関する大綱」に、子どもの貧困率や生活保護世帯の子どもの高校進学率などの指標を改善することが盛り込まれましたが、親の所得格差は拡大し続け、子どもたちの置かれた状況は依然深刻です。

大田区は、子どもたちの経済的困窮に起因する生活困難を把握するため全国の自治体の中でも早期の2016年に実態調査を行いました。調査結果から生活困難層の課題、ひとり親家庭の厳しい生活実態などが判明しましたが、子どもたちの「自分は価値のある人間だと思わない」という自己肯定感の低さに私は愕然としました。

翌年6月には「おおた子どもの生活応援プラン」を策定。子どもの健やかな成長を願う区民の自主的な学習支援や子ども食堂の大きな力、先駆的な区民団体と連携した行政の取り組みが今後どのように展開されるか問われる日々です。区内4か所で学習支援を行い高校進学の生徒が少しずつ増え、2018年度予算には更なる子どもの応援プランが計上されましたが、子どもの生活応援プランの狭間で見落としがちな課題もあります。

それは東京都が実施した「子供の生活実態調査」結果からもわかります。東京都は子どもと若者の2段階に分けて調査をしましたが、そこから見えてきた若者の姿は、若者が属する14.9%の世帯が低所得でした。若者が「持ちたいけれど持てないもの」として「自分に投資するお金」「家の中で勉強できる場所」をあげていましたが、経済的理由で大学進学をあきらめなくてもいい自分への資金、狭くてもいいから集中して勉強する部屋が欲しいという願いは、決して贅沢ではないと思うのです。

更に「学校を辞めたくなるほど経済的に悩んだことがある」若者が15%を超え、特にひとり親世帯が21%と高いのです。経済的理由で大学に進学する割合が低いにも関わらず、ひとり親世帯では 様々な支援制度の認知度が低く、福祉事務所への相談はわずか3・9%に過ぎず、相談する相手や場所がないと回答した方が一割もいました。

例えば生活保護世帯では、高校卒業後自立が求められ就職が基本です。18才で世帯分離され保護費が打ち切られるため、大学進学の授業料、通学定期代、学習経費、生活費など大学進学経費は全て本人が賄わなければならないのです。

ひとり親世帯の場合、母子父子寡婦福祉資金貸付金を利用すれば無利子で月額8万1000円。これらを授業料に充当させ、生活費等は全てアルバイトで賄うのです。平日大学へ通い、土日・祝日は働きながら学ぶ4年という歳月。就職時点で多額の奨学金返済という現実も待ち受けているのです。

「貧困の連鎖を断ち切る」国はそう明言して法律を作りましたが、努力を重ねている多くの若者、全ての学びたい学生が安心して教育を受けられる支援が乏しく、制度が不十分です。それは生活保護世帯だけではなく低所得者、ひとり親家庭、或いは多子世帯などボーダーと言われる世帯も同様です。

日本学生支援機構は、奨学金返済が滞った自己破産が延べ1万5千人に及ぶと発表し、その内訳は本人が8108人、親や親戚など連帯保証人が7230人だそうです。支援機構では返還猶予として、奨学金の利率を10%から5%へ引き下げ返還猶予の利用期間を5年から10年に延ばす制度改正をしましたが、2019年4月以降猶予制度期間が切れるため、現在猶予制度を利用している約1万人に影響を及ぼすと指摘されています。

晴れて社会人という希望ある一歩を踏み出す時点で、多額の奨学金返済を背負う学生がこれほど増加している日本で、貧困の連鎖を断ち切るために学びたいと願う若者の背中を押してあげる政策を今こそ制度化しなければ、少子化に向かう社会で誰が高齢化社会を支えてくれるのか。

大田区には区民のご寄付により設立した末吉育英基金、給付型奨学金があります。平成26年第2回定例区議会で末吉育英基金が提案され、多くの子どもたちが返済を必要としない奨学金に助けられてきましたが、その原資は少なくなっており、今後の存続を求め質問しましたが、残念ながら残額約2800万円という現実でした。給付型奨学金の継続は考えておらず、貸与型奨学金制度を運用するとの答弁でした。

昨年の第3回定例会の決算討論において私は給付型奨学金の継続を求め、その原資としてふるさと納税の活用について触れました。2016年度特別区民税から税額控除のふるさと納税額は7億4000万円、今年度は13億円と増加しています。大田区民がサービスは自治体から受け、税金を他自治体へ寄付するふるさと納税ですが、ふるさと納税は、自分が住む自治体にも可能であり、それらを子ども支援に回すことは区民の理解を得ると考えます。

例えば文京区はふるさと納税を原資にクラウドファンディングとして寄付をいただき、子育て支援課が子ども宅食を始めました。就学援助を受けている世帯やひとり親家庭に就学援助の案内と同時に宅食のチラシを同封し、今年度140世帯の募集に458世帯の申し込みがあったそうです。年間2000万の目標に対し1月15日現在2297名の区民、区外の方から7995万6000円のご寄付をいただき、2か月に一度、約10キロ相当の食材を宅食しています。4月以降600世帯に拡大する予定だそうです。

神奈川県の多くの弁護士や司法書士などで構成しているNPO反貧困ネットワークでは、「生活保護世帯から大学・専門学校へ進学する」という名称でパンフレットを作成しました。パンフレットには授業料とその減免制度、大学生活に必要な通学定期代、学習費、生活費などの必要経費、行政や社会福祉協議会の支援制度、奨学金の種類とアルバイトについて等、大学進学後の生活設計、卒業後の返済計画が細やかに記載し、神奈川県立高校、横浜と川崎の市立高校に無料で配布し指導に役立てています。また東京都高等学校PTA連合会からも問い合わせがあり100部進呈したそうです。低所得・生活保護世帯の若者の進学を支えるために、支援制度等をまとめたパンフレットの作成を検討すべきと考えますがいかがでしょうか。経済的理由で大学進学を諦めないよう若者に様々な部署が具体的な制度の情報を提供し、学生時代の生活設計に早期に取り組めるようにして欲しいと考え質問したところ、「必要な情報を必要な世帯に的確に提供できるよう、周知方法の一層の工夫を図っていく。」との答弁でした。

埼玉県では「大学進学のための経済的支援ガイド」を作成しています。この資料は大学の入学料・授業料減免制度、給付型奨学金、貸与型奨学金、教育ローンなど各制度の特徴を詳しくまとめ、更に関東を中心に各大学が実施している約1400件の給付型奨学金や授業料免除など進学支援制度を掲載しているため、経済的に厳しいけれど自分にふさわしい大学選びを支援しています。この資料を拝見して、いかに各大学では若者の学びを支えているか、いかに日本の高等教育の公費支出が少ないか痛感しました。

区内で働く若者を支援するため、就労促進に向けた法人等と連携した大田区奨学金返還基金制度の創設を検討してはいかがでしょうか。徳島県では「徳島県奨学金返還支援基金」を立ち上げ若者の県内就職の促進と県内産業の雇用創出の推進に向け、一定期間県内事業所に就業した場合に、奨学金の返還を支援する制度を創設しました。年間2億円の基金には法人・企業からも寄付を募り、無利子奨学金の場合、借受総額の2分の1を助成、有利子奨学金の場合は借受総額の3分の1を助成しています。高校生・大学生各100名と年間200名を対象として、昨年度は221名を認定しました。大学卒業後の一定期間大田区内で働き、なおかつ奨学金返済額が少しでも減免され仕事を続けられることは、若者にも区内事業所にとっても大変重要です。

今回訪問したご家族では、大学に進学する娘が介護ヘルパーとして働きますが、例えば区内社会福祉法人の社会貢献事業としてこうした若者を支援し、尚且つ区内で働いていただける環境の創設は重要です。私は2014年第3回定例区議会で社会福祉協議会を中心とした区内社会福祉法人の社会貢献事業の必要性を質問いたしました。大阪府では県内社会福祉法人が介護施設のベット数に応じて1ベッド1000円を拠出しあい、生活困窮者を支援しています。大田区でも介護ヘルパーや保育職の人材確保が厳しい現状が続いていますが、自治体や法人が協力し合い大田区で働きたい若者の確保と育成のため制度を作るべきと考え質問したところ、「福祉サービス人材の確保・育成は、地域社会の柱の一つ。学生の支援と地域社会の活性化の両立を可能とするために、どのようなことができるか模索していく。」とのこと。

教育基本法第4条3項には「国及び地方自治体は、能力があるにもかかわらず経済的理由によって修学が困難なものに対し奨学の措置を講じなければならない」と謳っております。全ての子ども・若者を育てぬく自治体が、今後の地域活性化における要であり、大田区の未来を切り開くと確信し質問しました。

 

 

 

| 議会・活動報告 |